『1Q84 BOOK3』 村上春樹 [純文学]
★★★★☆
ジャンル:純文学
何じゃゴルァ!! な作品。いきなりBOOK3ですが、復活する前に1と2は読了してしまっていたので。あくまでも私見ですが、純文にストーリー性を持ちこんで通俗化させない技量を持っている作家は、もういまや村上春樹しかいないと思う。まあ、昭和30年代以降に限定しても、村上春樹の他には安部公房と三島由紀夫しかいないと思うけど。
さて、本作は題名の通り舞台が1984年。一般的に対比される小説は、ジョージ・オーウェルの『1984』ですが、舞台が1984年とされているのなら、『ねじまき鳥クロニクル』を忘れてはならないと本職は思う。
特にBOOK3では牛河が青豆と天吾と並んで章立てまでされているのですよ。これはもう間違いなく、「こうであったかもしれない」過去が『ねじまき鳥クロニクル』で、「そうではなかったかもしれない」現在が『1Q84』ということではないのでしょうか。
あらためてこんなことを書いてしまったけど、そんなことはお見通しですよと叱らないでやってください。以上。
『レキシントンの幽霊』 村上春樹 [純文学]
★★★☆☆
ジャンル:純文学
及第点な作品。『レキシントンの幽霊』『緑色の獣』『沈黙』『氷男』『トニー滝谷』『七番目の男』『めくらやなぎと、眠る女』の七編を収録。
この中では『沈黙』が自分の好みの作品でした。
短編集だから、暇つぶしにしかならないけれど、現代純文作家(昭和四十年代以降デビュー)では間違いなく安心して読める作家no.1でしょうね。
若い頃に受けた衝撃と三十半ばにして初めて得られる共感。そう、三十半ばになって『ダンス・ダンス・ダンス』を手に取ったとき(主人公と同年代)、ガツンと頭をぶん殴られた気がしました。小説読んで、初めて感動に震えました。思わず「うおっ~!」と叫びたくなりましたよ。
村上春樹の醍醐味はここにあったんだ……とね。完全に目が覚めたって感じです。
(昔、教授から「僕は学生の頃、『暗夜行路』を読んだ後に感動で身体が震えた。君はどうだい?」と問われたとき、その『暗夜行路』について演壇に上がって発表していた自分は、「そんなこと全然ねぇ」と言って不評を買いましたが……)
最近はトーンダウンしているような気もしないではないが、それを超えるものを著者には期待したい。以上。
『TVピープル』 村上春樹 [純文学]
★★★☆☆
ジャンル:純文学
及第点な作品。『TVピープル』『飛行機-あるいは彼はいかにして詩を読むようにひとりごとを言ったか』『我らの時代のフォークロア-高度資本主義前史』『加納クレタ』『ゾンビ』『眠り』の六編を収録した短編集。
『我らの~』が絶品。『加納クレタ』は『ねじまき鳥クロニクル』に出ていましたね。最後の『眠り』はムットーニ(http://www.muttoni.net/)の題材になっていたので、結構期待したのですが、自分にはいまいちでした。
この手の純文学作品を読むと、なんだかホッとします。以上。